Office Guriの諸橋直子です。(公社) 日本アロマ環境協会のアロマテラピーインストラクター資格保有者です。
記事タイトルに使っている写真。これは実際に私が使用している精油です(一部)。アロマセラピーは犬にも有効です。
犬のアロマセラピーに興味を持っている方も多いので、今日は「基本のアロマセラピー」について書こうと思います。
そもそもアロマセラピーって何?
アロマ、アロマと聞くけれど、実際何なの?と思っている方に向けて簡単に説明すると「アロマセラピー=植物療法」です。
療法とつきますが、アロマセラピーは医療行為ではありません。病院で行われる治療の代わりにもなりませんので、その点はしっかり線引きをしてご注意を。
少しだけ歴史の話
そもそも「アロマセラピー=植物療法」という言葉が生まれたのはいつか?という話をします。
フランスの医学博士ジャン・バルネが、第二次世界大戦とインドシナ戦争に従軍。その際、負傷兵に精油を用いた治療を行い功績を上げました。
その後、1964年に『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』を出版。
この書籍が「アロマセラピー」という言葉を一躍有名にしました。
さらに歴史をもう少しだけ遡る
第二次世界大戦の起こる少し前。1928年、世界初の抗生物質が産声をあげます。その名を「ペニシリン」。イギリスのアレクサンダー・フレミング博士によって発見されました。
発見後、医薬品として実用化されるまではさらに10年以上かかりましたが、第二次世界大戦の頃にはアメリカのファイザー社がペニシリンの大量生産技術を確立。
それまで戦場では負傷兵の多くが傷そのものよりも、傷からの「感染症」で亡くなるケースがほとんどでした。
抗生物質、公衆衛生、ワクチンという3つの革命は、人類全体の健康状態の向上、寿命を伸ばすことに貢献したと考えられています。
それまでの医療体制があまりにひどかった
このように見ていくと、第二次世界大戦はちょうど「抗生物質」に出始めの時期と言えます。ペニシリンが多くの命を救う一方で、精油のような代替品に頼らざるを得ない場面もまだまだ多かった、そう推測されます。
インドシナ戦争でジャン・バルネが用いた精油は
- ラベンダー
- ティーツリー
とされています。この2つは殺菌・抗菌作用を持つ成分を含むことで知られています。
現在では、効果が確立された、安定した品質の抗生物質を私たちは利用できます。医薬品ではなく、品質も不安定な精油に頼らなければならないような時代ではないのは科学の恩恵です。
その一方で、アロマセラピーは現代の私たちの日常生活の中で「香りを通じた癒し」として、馴染み深いものになっています。
では、なぜ人は香りを癒しと感じたり、心地よいものとして受け取るのか?これについて引き続き解説していきます。
香りを「心地よい」と感じる「脳」
外部からもたらされる様々な感覚は、電気信号に変えられて「脳」へ伝わります。肌に何かが触れれば「あ、押されたな」、目からの刺激は周りに何があるか、形や色など伝えます。
そうした知覚の中で香りが唯一「感情」に働きかける感覚です。
ある香りを嗅ぐと、反射的に「好き」「この香りは苦手、嫌い」という風に私たちは反応しています。もっというと香りで気分は変わりますし、感情が揺さぶられることもあるということ。
香りをうまく活用することで、気分転換をしたり、ストレスをコントロールする。場合によっては「痛み」や「不安感」「吐き気」を緩和する目的でも使用されます。
香りのこうした特性を生かし、自分自身の健康を守る「セルフケア」として活用しませんか、というのが現代のアロマセラピーの目的です。
犬にアロマセラピーってどうなの?有害なの?
時々メールでもいただく疑問です。また、このサイトには「犬 アロマ 有害」というキーワードで辿りつく方も多いです。
faacebookページにアロマ関連の記事を書くと、動物で起こったアロマによる事故の記事のリンクを無言で貼り付けていく人もいます(これはあまりに失礼。さらに、リンク先の記事をきちんと読めば、それがかなり特殊な状況下での事故であることがわかります)。
さて、アロマセラピーは犬にとって有害なのでしょうか?
結論は「場合による」です。
「安全か?安全でないかを知りたいのに無責任では?」という方への解説。アロマセラピーは使い方を誤れば、人間でも有害になる場合があります。
例えば皮膚刺激が強い精油。「レッドタイム(Thymus vulgaris)」の精油は毒性が強く、皮膚に炎症を起こす可能性が高いため一般には用いません。もちろん動物にも不向きです。
他にも、一定の条件下で皮膚刺激を起こす成分を含むものもあります。代表は「ベルガモット」精油に含まれるベルガプテン。これは紫外線に当たると皮膚を刺激する物質に変わり、やけどに似た症状をもたらす場合があります。
使用する環境と量も大切な要因。高齢者、妊婦は特に香りに敏感になる傾向があります。密室で換気が悪い状態で精油を使用した場合、適量でも頭痛を起こす場合があります。
一方で、適切な精油を選び、適量の使用、という原則を守れば犬にとっても人にとってもアロマセラピーは様々なメリットをもたらします。
大切なのは
- 安全に使用できる精油の種類を知る
- 適切な量、使用環境、使用方法を知る
ということ。
嗅覚の鋭い犬にとって、アロマは負担では?
これもよく聞かれます。結論から言うと「犬の嗅覚の鋭さ」に対する正しい理解がないためにされている誤解です。
犬の嗅覚の「鋭さ」というのは、人が嗅いでいる同じ匂いを犬が100倍の強さで感じているわけではありません。
もし犬の嗅覚の鋭さが「匂いを人の何倍もの強さで感じてしまう」タイプのものなら、犬はどうして他の犬のお尻の匂いを嗅いで平気なのでしょうか?道路の近くを歩いていて、決して排気ガスの匂いを嗅がないわけではないでしょう。犬は問題ないのででしょうか?タバコの煙は?
考えるとキリがありません。
犬の嗅覚の鋭さは、決して匂いを私たちより「強く」感じるタイプのものではないということです。そうではなく、微量の匂いの物質でも嗅ぎ分けられる「感度の良さ」と言い換えられます。
その能力を最大限に活用しているのが「警察犬」や「麻薬探知犬」です。
警察犬の仕事のひとつ「足跡追及活動」では、人の残した匂いをもとに犯人や犯人の遺留品、行方不明者を捜索します。これは人の鼻では嗅ぎ分けられない、本当にわずかに残った匂いを犬が感知する能力を生かすものです。
迷子や行方不明者を探す際にも、この能力は活用されます。
大切なので繰り返しますが、犬の嗅覚の鋭さは、「微量の匂い物質も嗅ぎ分ける=感度の良さ」です。決して匂いを人より強烈に感じる、と言うタイプの敏感さではありません。
そのため、アロマセラピーは犬にとっては「少量で心地よい香りが感じられるリラクゼーション」として受け入れられます。適量を守ることで、負担にもなりません。
まとめ
というわけで、まとめです。
少々難しいことも書きましたが、アロマセラピーは香りと遊ぶ楽しいもの。家にいる時間が長い時ほど、香りで遊んで楽しみたいものです。
基本的には自分が嗅いで楽しいもの、気分がよくなるものを選びます。先ほどは「ジンジャー」の精油の香りを楽しみました。
我が家では犬たちも一緒に香りを楽しみます。
すっきりした香り、リラックスできる香り、頭が冴える感じがする香り。香りによって、人によって、犬によって感じ方は様々。
ぜひ今この記事をお読みの読者のみなさんも、犬と一緒に「香り」を楽しんでみてください。アロマセラピーは、家でゆっくり楽しむのに最適です。